シェイクスピア

2007年6月29日 (金)

奥さんはあまり嬉しくないでしょうな(「ヴェニスの商人」)

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「もし借金が返せなければ、その体から1ポンドの肉を切りとらせろ―。ユダヤ人の金貸しシャイロックが要求した証文が現実となった。ヴェニスの法廷が下した驚くべき判決とは?そして裁判官の正体は?商業都市ヴェニスとロマンティックな愛の都市ベルモントを舞台に、お金とセックスの陰喩をちりばめて繰り広げられる喜劇。」(Amazonから引用)

初期シェイクスピア喜劇の傑作「ヴェニスの商人」

当時、エリザベス暗殺計画が持ち上がっており、それに関与していたのがユダヤ人だったということから、ユダヤ人を絶頂からどん底へ落とすことにより観衆に多大なる快感を与えたであろう。

ただ、この芝居をただ反ユダヤ人的な芝居としてだけ見るのもつまらない。というかそうではない解釈も十分出来る。

第一、ここまで絶頂からどん底まで落としたならばシャイロックに対し同情が沸いてしまう。シェイクスピアはここを狙っているんではないか。勧善懲悪と見せつつ悪であるはずのシャイロックに最後に情を移させる。観客をどっちつかずにさせることが上手いシェイクスピアのことだ。単純な勧善懲悪の劇としてこの芝居を書いたとは思えない。

時代を経てシャイロックに対する見方が変わることも踏まえて、シェイクスピアはあえて同情をえるほどまでのシャイロックの急降下を演出したんではないだろうか??

また”喜劇”という点で一番面白いのは、裁判で変装したポーシャに気づかずバサーニオーが妻もすべて失ってもいいとアントーニオーの前で嘆くのに対しポーシャが

「奥さんはあまりうれしくはないでしょうな、もしここにいらして、その話をお耳にされたとしたら」

と答える。そしてグラシャーノーもこちらは自分の奥さんのネリサが目の前にいることを知ってて妻より大事なものがあると言う。

それに対してネリサが

「そういうことは、奥さんのおいでにならぬときにおっしゃったほうがよろしい、さもないと一荒れまいりましょうからな」

かくも深刻なシーンを喜劇として和ませるこのやりとり。

いかに観客を楽しませるか、その上でシェイクスピアはやはりずば抜けている。

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2007年6月22日 (金)

閃く剣を鞘におさめろ、夜露で錆びる(「オセロー」)

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シェイクスピア4大悲劇のひとつ「オセロー」の紹介・レビューです。

今夏に(というか7月に)劇団円でオセロー公演があるので、それに先駆けて福田恒存訳の「オセロー」を再読したので紹介します。

あらすじは

「ヴェニスの貴族でムーア人のオセロは、デズデモーナを自らの妻とし、これをよく愛している。オセロの旗手イアーゴーは、同輩キャシオーの昇進を憎み、オセロに、デズデモーナがキャシオーと通じていると進言する。真実味を増すために、イアーゴーは、オセロがデズデモーナに送ったハンカチを盗み、キャシオーの部屋に置く。

これを知ったオセロは怒り、イアーゴーにキャシオを殺すように命じ、自らはデズデモーナを殺してしまう。だが、イアーゴーの妻のエミリアは、ハンカチを盗んだのは夫であることを告白し、イアーゴーはエミリアを刺し殺して逃げる。イアーゴーは捕らえられるが、オセロはデズデモーナに口づけをしながら自殺する。」(ウィキペディアより引用)

この作品を読む上において作品名通りオセローが主人公なのか、それともイアーゴーこそが主人公なのか?この視点が重要なように思います。

オセローの意思、というよりはすべてにおいてイアーゴーの策略の通りに話は進みます。

つまり、

「イアーゴーが書いた悲劇の脚本をオセローがなぞっている」

この作品の構図はこのように言えるんではないでしょうか?

そして何より面白いのが、

オセロー=従順 イアーゴー=狡猾

この対比が実に面白い。さっきも言ったとおりなぜこんなにもオセローはイアーゴーのプロットにはまりゆくのか、それはオセローが従順なる故なのか。妻よりも何故輩下のイアーゴーの言葉に従うのか?

そこには愛するが故の疑念、「在るから故の恐怖」というものが存在するように思う。

私たちだってそうだと思う。夫、妻、彼氏、彼女、いなければいないで寂しい。

だが、いたらいたで「在るから故の恐怖」というものが付き物ではないか、オセローでのそれを縮小して捉えれば私たちの言う嫉妬に繋がるのかもしれない。

象徴的なのは

「どうしてもお前は死なねばならぬのだ、死ななければ、次々に男を陥れる」

という台詞、「在るから故の恐怖」に極限なまでに侵された結果として、自分の妻への恐怖を自分の領域だけではなく、一般化してほかの男も陥れるという一般的な恐怖にまで昇華させている。

愛するがゆえに憎い、という最も悲壮なパラドックスを感じるためにも、ぜひこのオセローに触れてみるのはいかがでしょうか??

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☆印象的な台詞☆

「イアーゴー:くだらない男でも女に惚れているときは、正味よりちっとは立派になるという」

(二幕一場)

「オセロー:犯した罪のことを考えろ

デズデモーナ:それはあなたを愛したことだけ。

オセロー:そうだ、そしてそのためにお前は死ぬのだ。」

(五幕二場)

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